101人が本棚に入れています
本棚に追加
(こいつ…ひょっとして…!)
志狼は、砕けたカインの足元を見て、息を呑んだ。
執念が体を支えていた、と、カインは言った。
ならば今、体が砕けてきているのは、彼がその執念から、少しずつ解放されているからなのか。
「猛黒牙…陸丸の動きから…、何か得られたかな?」
「!あ…」
陸丸は、カインの問に、俯き、首を横に振った。
「ふ…、そうか。御剣志狼が奴のモーションを見ていれば、参考に出来たかも知れなかったが」
「…エリィが遠距離から、速攻で倒しちまったからな」
「くく…あれは見物だったな…」
何故、自分が消滅しかかっているというのに、笑えるのか。
陸丸には、全く理解できなかった。
「焦るな…。猛黒牙を相手に、たいした負傷もしていないということは…、かなりの実力がついてきている…ということだ…」
「…あ」
「君とココロが初めて出会った場所…。あそこに行けば、何かが掴めるかもしれないな…」
「京都…!古流槍術の道場!」
そうだ。
同じ流れを汲み、鋼牙が封印されていたあの道場ならば、家に伝わっていない何かまで分かるかもしれない。
「…強くあれ、陸丸君…。君が2人を守るんだ…」
「!…はい!」
普段であれば、間違いなく照れて、慌てて首を横に振っていただろう。
しかし、陸丸は素直に頷いた。
恐らくはこれが彼の、最期の言葉になるであろう、と、悟っていたから。
カシャンッ
カインの左腕が、砕けて消える。
最初のコメントを投稿しよう!