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「…御剣、志狼」
「何だ」
カインに呼ばれ、志狼はブリットと代わり、傍らに片膝を付いた。
「エリィを守れ…。何があっても…!…決して死なせるな…!」
「分かってンよ。俺はテメェじゃねぇんだ…そんなヘマするか」
「言ってくれるじゃねぇか」
苦笑いを浮かべるカインに、志狼は複雑な表情で笑った。
この男は、紛れも無く、ありえる未来の自分だ、と。
エリィを守りきれなかった時。
守るべき人間に、後ろから撃たれた時。
怒りに駆られて、手にした強大な力を…振るわずにいられるだろうか。
『安心して眠れ。志狼には、私が付いている』
「!ヴォル、ネス…」
そう。
そうだった。
(そうだ…。俺には…ヴォルネスがついてる)
大丈夫。
自分が暴走しそうになったら、彼が絶対に止めてくれる。
「…そうか。なら、安心だな…。頼むぞ、ネス…」
『…ああ』
カインも安心したように、何かを懐かしむように、目を瞑って笑った。
「最期に…ひとつだけ」
「?おわっ!?」
どこにそんな力が残っていたのか、カインは、右手で志狼の胸倉を掴んで引き寄せた。
「な、なんだ!?」
「…」
そして他に聞こえない声で、志狼に何かを伝えた。
「…!」
何を言われたのか、志狼が目を剥く。
それとほぼ同時に、カインの右手が、砕けて消える。
「…時間だ」
胸から首に掛けてが、砕け散る。
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