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「…何から詫びたらいいのか分からない…。すまなかった、マリア…」
「…何を謝られているのか、分からないわ。カイン。あなたは何時も…、私に優しかったじゃない」
カインの目から涙が溢れる。しかしその雫も、結晶と化してパラパラと散っていく。
「私は、何一つ後悔していないわ…。
私の生きた証は…、今ここに、こうして後を継いでくれる人たちそのもの。
彼ら会えただけで…、もう他に、何もいらない」
しかし直後、マリアはブンブンと、激しく首を横に振った。
「…嘘っ!嘘です…!私は…私は、あなたと…っ!!」
「…マリ…ア…」
ニコリと微笑むカイン。その笑みを体現する唇も、そして目も、粉々に砕けて、風に流れていった。
「…わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ…っ!!!」
マリアの悲痛な嗚咽が、辺りに響き渡った。
拳火も、水衣も、鈴も、ココロも、陸丸も。
ブリットも、ユマも、そして志狼も。
あるものは手を合わせて、あるものは礼をして。
先代の勇者。
…人類の偉大なる恩人を、送り出したのだった。
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