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…どれほど時間が経ったのか。
マリアとココロの啜り泣きが聞こえなくなってから、暫くして。
「…」
マリアが、スックと立ち上がった。
「…さてと、みんな帰ろっ」
「…エリィ」
立ち振る舞いや、瞳の色からそれを察する志狼。
「…マリアさんは?」
「眠った。深く深~く、ね」
「…そうか」
恐らくは、二度と目覚めることのない眠り。
願わくば、カインと共に、安からに眠って欲しい。
志狼は心からそう願っていた。
「で…どうするんだ、お前達はこれから」
俯いたままのココロに、志狼は尋ねた。
「兄ちゃん…今は」
そっとしておいてあげて欲しい。
庇うように間に入る陸丸の肩に手を置き、志狼は首を横に振った。
「こいつらの生死に関わる問題だ。曖昧なままには出来ない。」
「…志狼兄ちゃん」
「確かに。あれだけ派手に打倒大魔王を謳っては、妖魔勢のなかでも、立場は最悪…、ただでは済むまい」
「そんな…!」
ブリットの言葉に、陸丸は周囲のイヴィルイレイザーを見た。
皆一様に、動きを見せない。もはや覚悟を決めているのだろうか。
どうやらこちらと戦う意志はもう無いようだが、大魔王勢と事を構えようにも、頭が不在では、結果は火を見るより明らかである。
あのメデュー辺りに、粛正されるのがオチだろう。
「確かに、ここまでしておいて皆殺しにされても、後味悪いわね」
「…水衣姉、ハッキリ言い過ぎ」
水衣のリアル過ぎる言い回しに、鈴は半眼になった。
だがこのまま放っておけば、近い未来、それが現実にならないとも限らない。
志狼は、改めてココロに問う。
「どうする?お前達は今後」
「…我らの今後は、既に決まっております」
「あ?」
泣きはらした直後とは思えないほど凛とした声で、ココロは言った。
ザッ
そして志狼の目の前で傅く。
ココロだけではない。
周囲のイヴィルイレイザーや妖魔が、一斉に膝を付いた。
「我らは、新たな剣魔王に従い、戦い抜きます」
「…はぁ?」
何を言われたのか分からない、と、志狼は素っ頓狂な声を出した。
「新しい…剣魔王…!?」
エリィが志狼を指差して、恐る恐る確認する。
「シローが!?」
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