101人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい」
頷くココロに、拳火も、水衣も、ブリットも、ユマも、鈴も、陸丸も、開いた口が塞がらない。
「…どういう事か、説明してくれる?」
「はい。剣魔王妃様」
「ぶふっっ!!け、けけけ、剣魔王妃!?」
「…もう驚くのは後でいいから…!説明しろ…っ!!」
ボンッ、と赤くなるエリィの頭を押さえつけ、拳火が先を促した。
「御剣志狼様、及びエリス=ベル様は、前剣魔王のカイン様との一騎打ち…
すなわち、『剣の儀』を行い、見事勝利されました」
「我ら剣魔は、実力が全て。他の魔王と違い、種族による差は無く、剣の儀に勝つことで、無条件に剣魔王となる事が出来ます」
「あ、アルフォクスさん」
ココロの説明を補足するように現れたのは、恭しく頭を垂れた狐獣人のアルフォクスだった。
「それで、王妃ってわけ…」
水衣は眉根を寄せて、苦笑いした。
一騎打ちとはいえ、カインが認めた上で志狼とエリィは共に戦った。
この分では、ヴォルネスも剣魔王と言われて敬われる可能性がある。
「お前達、そんなんで納得いくのか!?」
「…我らが貴方を主と認めた要素は、正確には、剣の儀だけではありません」
「ああん?」
「これだけの攻撃の中、我らに死者は出ませんでした」
「!そ、うか」
死者が出なかったか。良かった。
しかしホッとした直後、こめかみに汗が光る。
「我らは、その高い志に、賛同します」
「い、いや…これは、その…」
まさか、こんな事態になるとは夢にも思っていなかった。
最近の彼にしては、珍しく歯切れ悪く言い訳をしようとして思いつかず、頭をガシガシと掻いた。
「剣魔王って…。カインの前のバサラを倒したのは、俺のオヤジだぞ!?それもいいのかよ!」
「我らが認めた主は、あくまで貴方です。問題はありません」
「王なんて、俺は経験ねぇし、無理だろ!」
「当たり前だ」
「まぁ、普通経験ないでしょうねぇ…」
必死な言い訳に、ブリットとユマが突っ込みをいれる。
「問題ありません。貴方は我らに指針を示していただければ、それで結構です。
作戦の立案や実行は、我らにお任せください」
「…」
だめだ。
これは何を言っても無駄だろう。
「あの、ちょっと聞きたいのですが…」
「はい、なんでしょう」
ユマがアルフォクスに向かって手を挙げる。
「あの城で、大破寸前のライガードを修復することは可能ですか?」
「勿論可能です。設計図はありますし、ヴォルガイアーのスペアパーツの備えもございます」
「いたれりつくせりですね。予想以上に早く直せそうですよ!」
「なるほど。それならば、軍の施設を調達する手間は省けるな」
「てめぇら…」
すっかり乗り気なブリットとユマに、頬をヒクつかせる志狼。
完全に他人事である。
最初のコメントを投稿しよう!