『第十五話 剣の継承』

22/24
前へ
/821ページ
次へ
「はい」 頷くココロに、拳火も、水衣も、ブリットも、ユマも、鈴も、陸丸も、開いた口が塞がらない。 「…どういう事か、説明してくれる?」 「はい。剣魔王妃様」 「ぶふっっ!!け、けけけ、剣魔王妃!?」 「…もう驚くのは後でいいから…!説明しろ…っ!!」 ボンッ、と赤くなるエリィの頭を押さえつけ、拳火が先を促した。 「御剣志狼様、及びエリス=ベル様は、前剣魔王のカイン様との一騎打ち…  すなわち、『剣の儀』を行い、見事勝利されました」 「我ら剣魔は、実力が全て。他の魔王と違い、種族による差は無く、剣の儀に勝つことで、無条件に剣魔王となる事が出来ます」 「あ、アルフォクスさん」 ココロの説明を補足するように現れたのは、恭しく頭を垂れた狐獣人のアルフォクスだった。 「それで、王妃ってわけ…」 水衣は眉根を寄せて、苦笑いした。 一騎打ちとはいえ、カインが認めた上で志狼とエリィは共に戦った。 この分では、ヴォルネスも剣魔王と言われて敬われる可能性がある。 「お前達、そんなんで納得いくのか!?」 「…我らが貴方を主と認めた要素は、正確には、剣の儀だけではありません」 「ああん?」 「これだけの攻撃の中、我らに死者は出ませんでした」 「!そ、うか」 死者が出なかったか。良かった。 しかしホッとした直後、こめかみに汗が光る。 「我らは、その高い志に、賛同します」 「い、いや…これは、その…」 まさか、こんな事態になるとは夢にも思っていなかった。 最近の彼にしては、珍しく歯切れ悪く言い訳をしようとして思いつかず、頭をガシガシと掻いた。 「剣魔王って…。カインの前のバサラを倒したのは、俺のオヤジだぞ!?それもいいのかよ!」 「我らが認めた主は、あくまで貴方です。問題はありません」 「王なんて、俺は経験ねぇし、無理だろ!」 「当たり前だ」 「まぁ、普通経験ないでしょうねぇ…」 必死な言い訳に、ブリットとユマが突っ込みをいれる。 「問題ありません。貴方は我らに指針を示していただければ、それで結構です。  作戦の立案や実行は、我らにお任せください」 「…」 だめだ。 これは何を言っても無駄だろう。 「あの、ちょっと聞きたいのですが…」 「はい、なんでしょう」 ユマがアルフォクスに向かって手を挙げる。 「あの城で、大破寸前のライガードを修復することは可能ですか?」 「勿論可能です。設計図はありますし、ヴォルガイアーのスペアパーツの備えもございます」 「いたれりつくせりですね。予想以上に早く直せそうですよ!」 「なるほど。それならば、軍の施設を調達する手間は省けるな」 「てめぇら…」 すっかり乗り気なブリットとユマに、頬をヒクつかせる志狼。 完全に他人事である。
/821ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加