『第十五話 剣の継承』

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「いいじゃねぇか。味方は多い方がよ」 「少なくとも、再び戦う事もないし、放っておく事にもならないでしょう」 「…い、いやしかしだな…!」 それがいい、と、やはり乗り気な拳火と水衣。 一理あるのだが。志狼はやはり納得しきれない。 「俺は素敵な思いつきだと思うけどなぁ」 「まぁ、私もそう思う…かな」 「…うー…ん」 無邪気なものだ。陸丸の他意のない爽やかな笑顔と、嬉しそうに尻尾を振る鈴を前にして、志狼は唸るしかない。 「あ、あの、王妃は何とかならないかな~。恥ずかしいから」 「かしこまりました。エリィ様」 「…」 問題はそこだけかよ。と、突っ込む気力も最早ない。 「ヴォルネス、どう思う」 『く…っ、君らしくて、とってもいいと思うが』 「テメェ…面白がってやがるな」 こんなに笑っているヴォルネスは、もしかしたら始めて見たかもしれない。 今見ても全くの不愉快なのだが。 『ぶっくくく…っ!!勇者にして剣魔王…!!』 『ぶわぁっはっはっはっは!!』 『前代未聞ですね…、くくく…っ!』 『流石は志狼だな』 『いやー、これは傑作だわ』 『これは予想外も予想外だな』 合体を解いた鋼牙、土熊、石鷹の三機も、紅麗、蒼月も、ウォルフルシファーも、 腹を抱えて笑いを堪えているが、全く堪え切れていない。 呼吸など必要ないだろうに、器用な連中である。 腹立たしい。 「だぁぁぁもうっ!!勝手にしろッ!!」 叫び声を上げ、志狼はズカズカと歩き出した。 「王よ、どちらへ!」 「帰るんだよッ!!」 「あ、じゃあギアアークをこちらに置いて、転送装置で家に帰りましょう」 「かしこまりました。中のライガードは、こちらで回収して修復作業に掛かります」 「お願いします。後で顔出しますので」 「なんでスムーズなんだよッ!くそっ!!」 流れるような作業のバトンタッチに、志狼は悪態をついて、そのまま倒れこむ。 「…身体が動かん…」 当然だ。 本来であれば、死んでいてもおかしくない怪我を、全身に負っているのだ。 「メイド!王をお連れしろ!!」 「め、めいど!?おわぁぁ!!」 アルフォクスの号令に、どこからともなく現れたメイド服姿の妖魔が、志狼を抱きかかえた。 「ちょっ、離せぇぇぇっ!!自分で歩けるっ!!」 「普通に無理でしょ」 「無茶言わないで、運んでもらえ」 水衣と拳火は、もう状況を楽しんでいた。 「いいなぁ、私も運んでもらいたい…。流石に疲れた」 「はい。お望みとあらば」 「ひゃぁ!?」 グッタリしていたエリィも、突如として現れたメイドに抱き抱えられた。 それぞれのパートナーを召喚器に収容し、陸丸、鈴、ココロ、ブリット、ユマ、拳火、水衣は、 メイドに運ばれる志狼とエリィの後ろに続く。 「本当にこれでいいのかぁぁぁぁあ!!」 志狼の叫びに、ブレイブナイツと剣魔達は揃って笑った。 直前に訪れた、悲劇を忘れたように。 …否。悲劇を乗り越え、楽しそうに笑っていた。
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