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「いいじゃねぇか。味方は多い方がよ」
「少なくとも、再び戦う事もないし、放っておく事にもならないでしょう」
「…い、いやしかしだな…!」
それがいい、と、やはり乗り気な拳火と水衣。
一理あるのだが。志狼はやはり納得しきれない。
「俺は素敵な思いつきだと思うけどなぁ」
「まぁ、私もそう思う…かな」
「…うー…ん」
無邪気なものだ。陸丸の他意のない爽やかな笑顔と、嬉しそうに尻尾を振る鈴を前にして、志狼は唸るしかない。
「あ、あの、王妃は何とかならないかな~。恥ずかしいから」
「かしこまりました。エリィ様」
「…」
問題はそこだけかよ。と、突っ込む気力も最早ない。
「ヴォルネス、どう思う」
『く…っ、君らしくて、とってもいいと思うが』
「テメェ…面白がってやがるな」
こんなに笑っているヴォルネスは、もしかしたら始めて見たかもしれない。
今見ても全くの不愉快なのだが。
『ぶっくくく…っ!!勇者にして剣魔王…!!』
『ぶわぁっはっはっはっは!!』
『前代未聞ですね…、くくく…っ!』
『流石は志狼だな』
『いやー、これは傑作だわ』
『これは予想外も予想外だな』
合体を解いた鋼牙、土熊、石鷹の三機も、紅麗、蒼月も、ウォルフルシファーも、
腹を抱えて笑いを堪えているが、全く堪え切れていない。
呼吸など必要ないだろうに、器用な連中である。
腹立たしい。
「だぁぁぁもうっ!!勝手にしろッ!!」
叫び声を上げ、志狼はズカズカと歩き出した。
「王よ、どちらへ!」
「帰るんだよッ!!」
「あ、じゃあギアアークをこちらに置いて、転送装置で家に帰りましょう」
「かしこまりました。中のライガードは、こちらで回収して修復作業に掛かります」
「お願いします。後で顔出しますので」
「なんでスムーズなんだよッ!くそっ!!」
流れるような作業のバトンタッチに、志狼は悪態をついて、そのまま倒れこむ。
「…身体が動かん…」
当然だ。
本来であれば、死んでいてもおかしくない怪我を、全身に負っているのだ。
「メイド!王をお連れしろ!!」
「め、めいど!?おわぁぁ!!」
アルフォクスの号令に、どこからともなく現れたメイド服姿の妖魔が、志狼を抱きかかえた。
「ちょっ、離せぇぇぇっ!!自分で歩けるっ!!」
「普通に無理でしょ」
「無茶言わないで、運んでもらえ」
水衣と拳火は、もう状況を楽しんでいた。
「いいなぁ、私も運んでもらいたい…。流石に疲れた」
「はい。お望みとあらば」
「ひゃぁ!?」
グッタリしていたエリィも、突如として現れたメイドに抱き抱えられた。
それぞれのパートナーを召喚器に収容し、陸丸、鈴、ココロ、ブリット、ユマ、拳火、水衣は、
メイドに運ばれる志狼とエリィの後ろに続く。
「本当にこれでいいのかぁぁぁぁあ!!」
志狼の叫びに、ブレイブナイツと剣魔達は揃って笑った。
直前に訪れた、悲劇を忘れたように。
…否。悲劇を乗り越え、楽しそうに笑っていた。
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