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「…………おはよ、奏」
不機嫌そうに唯が言う。でも、実際は不機嫌ではないとあたしはわかっていた。ただの照れ隠しだ。
「おはよう。今日もいい反応ありがとう」
「ーーっ! したくてしてるわけじゃないっ」
うろたえ、顔を赤くする唯は非常に可愛い。あたしの表情も緩む。
「笑うなっ!!」
あんまりいじめると嫌われる――わかってはいるんだけど、こんな反応見せられたらもっとやりたくなる。
あたしは唯に手を伸ばし、頭をぽんぽんっと軽く叩く。
「だって唯が可愛いんだもの」
唯の頭に手を置いたままあたしは言う。見る間に唯の顔が赤くなった。あーあ、耳まで赤くしちゃって。可愛いなぁ、もぅ。
「か、かわいくなんかないっ」
「可愛いって」
「かわいくないっ」
「可愛い」
「かわいくないっ」
可愛い、かわいくないと何度か繰り返した時、すっかり存在を忘れていた聖奈からストップがかかった。
「えーっと、そこのお二人さん。いちゃつくなら外でやって。見てて暑いから」
聖奈の言葉に一緒にいたもう1人もわざとらしく手で扇いで見せる。こいつら……。
「いちゃついてないからっ。どっからどう見たらそう見えるの? せっちゃん1回眼科行った方がいいよ!」
あまりにも一生懸命否定されるとあたしもちょっと傷つくんだけどなぁ……。
苦笑いを浮かべつつ、唯の頭から手を降ろし近くの空いてる椅子に腰掛ける。視線を感じ目を向けると、聖奈ではないもう1人――芳原 沙代(よしはら さよ)が、あたしを同情のこもった目で見ていた。
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