3.電話

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 もうすぐ夏休みになるある日の夜。あたしは家電の子機をもてあそんでいた。持て余していたといってもいい。 ……電話、こないかな。  待っているのはこの電話の着信音。もちろんそんなタイミングよく鳴るはずもない。  第一、彼女、唯から電話がかかってくるとしたら先にメールが1本くる。唯はいきなり電話してくるようなヤツじゃない。それこそ、メールもできない状態じゃなければ。 「……」  子機を右手で軽く投げ、左手でキャッチ。左手から右手へ。また右から左。  何してんだか。自分の無駄な行為に思わず苦笑する。  唯……  考えるのはいつも彼女のこと。大好きな彼女。世界で1番愛しくて、自分自身より大切な彼女。唯はあたしの全てだ。  でも……  だからこそ不安にもなる。  もうすぐ夏休み。唯がいないせいでそこそこにしか楽しくなかった修学旅行も終わってしまい、皆が受験モードに移行しつつある。あたしも進路を考えないといけない。  唯がいなかったらどうなるんだろ……  今現在、唯で出来ているこの奏という人物は、唯のいないところにいったらどうなってしまうんだろう。  あたしと唯の高校は別だ。唯はあたしが受けるトコよりも難しいところを受ける。あたしのトコもいわゆる“進学校”で、決してレベルが低いわけじゃないんだけど。この段階でだいぶ背伸びしてる状態だから。これ以上手を伸ばすことはできない。  唯が、好きなのに。  最近は唯を見ると切なくて、苦しくなる。どうしたらいいかわかんなくて。
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