3.電話

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 それに悩みはそれだけじゃない。最近、とはいわないか。結構前からあたしは唯を好きでいることに疑問を抱く時がある。  あたしは唯がそこにいてくれるだけで嬉しくて、唯と話せることが喜びで、何も変わらない日常が幸せだと思っている。  でも、唯にとってはそうじゃないんじゃないかって。嫌われてるなんては思ってない。好かれてる自信はある。ただ、唯にとってのあたしは、沙代や聖奈と同じ友達の範疇にしか過ぎないから、もう昔みたいな特別じゃないんじゃないか、そう感じてしまう。  このまま唯を好きでいていいのかな……  あたしは唯の『特別』がいい。あたしが唯を好きになったばかりの頃のように、唯にとっての『特別』。  唯が大切。大好き。でも……、  それだけじゃいけないこともある。  進学のこともあり、あたしは弱気になっていた。  今、唯を諦めれば傷は浅くて済む。  唯を好きじゃなくなれば……  唯を………… ぴぴぴぴぴっぴぴぴぴぴっ  いきなり目覚まし時計みたいな電子音が鳴り響いた。  出所は手に持っている電話の子機。驚きと反射で番号も見ないで電話をとっていた。  とった瞬間、唯だったらいいな、という期待が頭をよぎった。
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