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プルルルルル・・・・
プルルルル・・・・・
『はい、内手ですけども』
久しぶりに聞く母の声
だった。
「あ、母さん? 突然
なんだけど今どこ!?」
『家で夕食の準備しようとしてるとこよ』
「あ、ならうどん
作ってもらえる?」
『いいけど・・・アンタこそどこにいるの?』
「家の近くだよ。久しぶりに母さんのうどん食べに帰って来たんだ・・・」
『あら、そうだったの! ならお寿司でも食べにいく?』
「いや、うどんがいい
んだ・・・母さんの
作ったうどん食べたい・・・」
『そう、わかったわよ。腕によりをかけて作ってあげるから!』
「うん、もう少しで着くから」
電話を切ると目頭が
熱くなる。
死にたくない・・・・。みんなにサヨナラも
言ってない・・・。
涙を乾かすようにオレはさらにスピードをあげた。
タイマーが“7分32秒”をしめした頃、玄関の前に着いていた。
風に乗って懐かしい香りが漂ってきた。
人生のほとんどを
過ごしたこの家の玄関を開けキッチンに入った。
そこには、子供の頃は
大きく見えた母の小さな背中があった。
「母さん、ただいま!」
ふと、こちらを見て
やさしく微笑む。
「ただいま、もう
出来上がるから座って
待っててちょうだい。
ちゃんと手あらって
からよ」
「もう子供じゃないん
だから、そんな事
わかってるから」
「そうね、アンタももう少しで成人するものね」
「う、うん。
そうだね・・・・」
その言葉に戸惑った。
オレにはもう、明日が
無い・・・・
成人するなんて
ありえないんだ・・・・・
テーブルについて
まもなく、うどんが
完成した。
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