ライフ・タイマー

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ジャック犯が前に転がる。運転手がブレーキを 踏んだようだ。そのまま運転手は、バスから降り走り去った。 警察を呼びに行ったの なら助かるのだが・・・・・・ 「危なかったわい・・・死ぬかとおもった!」 ジジィの顔いっぱいに 血がしたたっている。 「私に抵抗するんですか。もう我慢なりません。ここで死んでもらいます!!」 ジャック犯は、こちらに包丁を向けながら走ってくる。 どっちから殺すつもり なんだ!? オレか!?ジジィか!? ジャック犯の目線は幸運にもオレを見ていた。 これならジジィの逃げる時間がかせげる。しかし、オレはここで死ぬ のだろう。 まぁ、どちらにせよ死ぬのだけど・・・・。少しでも人の為に死ねて よかった。 ジャック犯は、まっすぐオレに向かって来ている。あと2メートルほどだ。身構えたその時。 「死ねぇぇぇぇぇ!!・・・っと見せかけて私の狙いは初めから このジジィなんだよ!!」 オレの目の前で急に方向をかえて、ジジィに 突っ込んだ。 「やめろ!!」 体がとっさに動いた。 しかし、ジャック犯に あと少し手が 届かなかった。 鋭利な包丁は、ジジィの痛々しい程痩せこけた体に突きささった。 「かはぁ・・・・おのれ・・・・よくも・・」 体に刺さった包丁は、 ジジィの生命力を 吸い取るかのように、 いきいきと夕日に キラキラと輝く。 「おじぃさん!! すみませんオレが守ってあげれなくて!」 「君は・・・悪く・ ない・・んだよ・・・・」 相当、苦しいのか途切れ途切れに話している。 「おじぃさんは、 しゃべらないでください」 「最後くらい・・・ しゃべらせろ・・」 オレは苦しそうな姿を 見て声が震えた。 「最後なんて言わないでください………」 遠くからパトカーと 救急車のサイレンが 聞こえてきた。きっと 運転手が通報した のだろう。 「先に逝って悪いのう・・・でもヤツの武器は 奪ったぞ・・・ほれ・・」 苦しそうに笑みをうかべ、お腹に刺さった包丁を指差す。 「そんな・・・ おばぁさんに会えなく なりますよ?」 なぜか、そんな状況でも笑って話せた。 「なぁに、一緒に逝けて本望だゼ!!」 「生きて一緒にお見舞い行きましょうよ」 「そうだな・・・そんな事よりヤツを・・・」
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