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鮮やかな緑色の葉に優しく触れる彼を真っ直ぐに見つめて、僕も同じような質問をぶつけてみた。
「君の左足は、怪我?」
すると、星垂はこちらを向かずに薄く笑って答えた。
「いいや。違うよ。君と同じ。生まれつきなんだ」
「じゃぁ、病気?」
「さぁ」
「動かないの」
「うん」
それ以上、星垂は答えない。沈黙が温室を支配した。
何か悪いことを訊いてしまったのだろうか。
重い空気に耐えきれず、僕はパシャパシャと水面を掻き混ぜた。水は透明で冷たく、跳ねる水滴は星のように瞬く。
「綺麗だね」
無意識に、そう呟いていた。
「もっと綺麗なものがある」
そう言って、星垂は手招きした。
まるで楽しい悪戯を企んでいるような笑顔だ。
「なに」
「いいから」
星垂にせかされ、僕は少し警戒しながら彼の傍に寄った。
「見て」
そっと囁く星垂の声がくすぐったい。
彼の指差す方を見ると、先程までは何もなかった茎の先端に小さな蕾がついていた。
不思議なことに、淡く白い光を放っている。
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