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「これ……」
「真綿のようだろう?」
見回すと、至る所で真綿の蕾が淡く発光している。
蕾はどんどん膨らみ、真白の花びらがほころび始めた。
「ごらん。星が生まれるよ」
星垂は、そう言って両手を高く上げた。
その言葉を合図に、全ての花が次々と咲いていく。花が開く瞬間、中からぽっと光が吐き出された。
そして、吐き出された光が一斉に舞い上がる。
それは、まるで夏の夜に飛び交う蛍の光。もしくは、風花か。
僕は、その光景に圧倒され、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
そんな僕を見て、星垂はクスリと笑った。
彼の周りには、たくさんの光が舞っている。そのせいか、彼自身も輝いて見えた。
「なんて顔してるの」
「これ、全部星?」
「そうだよ」
「でも……。星は、あの水の中で眠ってるんじゃなかったの」
「水の中を覗いてみるといい」
光達と戯れながら星垂は答える。
僕は言われるままに、そろそろと水面を覗いてみた。
「あ……」
思わず目を見張った。
水底に沈んでいたはずの硝子玉が消えているのだ。
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