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「あれは、何」
「さっき君が追いかけてたもの」
「じゃぁ、あの流れ星が」
顔だけを星垂に向けて尋ねると、彼は無言で頷いた。
「あの中で星は眠る」
「眠る? 星が?」
「おかしい?」
「だって」
星が眠るなんて。
俄かに信じがたい。それに、水の中に沈む、彼が星だと言うあの球体は、僕にはどう見ても硝子玉にしか見えなかった。
「確かに、こうして見るとただの硝子玉だけどね」
僕の頭の中を見透かしたようにそう言うと、星垂は穏やかに微笑んだ。
綺麗な笑顔だ。
僕は、ぼうっと彼に見とれながら尋ねた。
「君は」
「え?」
「君は、ここで何をしているの」
すると、星垂はゆっくりと身を起して立ち上がった。
「僕は花守だよ」
「花守」
「この花達の世話をしている」
言われて、改めて温室を見回してみた。
咲いている花は無い。蕾すらまだのようだ。
「ずっと、ここで?」
「ずっと、ここで」
その笑顔が少し哀しいものに見えて、僕は目を見張った。
漆黒を湛えた暗闇に沈む、星達の宮。
真白の温室に敷き詰められた花達を守る、純白の少年。
清らかな夢を見ているような気がして、僕はぼんやりと星垂の横顔を見上げていた。
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