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「君の目、どうしたの?」
唐突に問われて、僕は一瞬頭の中が真っ白になってしまった。
そんな僕に星垂は優しく微笑みかける。
「右目。眼帯してるから」
「あ、あぁ。これ。……生まれつきなんだ」
眼帯に触れて答えた。
何故だろう。ひどく哀しくて寂しい気持ちになる。
「見せて」
僕の目の前に膝をつき、星垂は眼帯に手を伸ばしてきた。
僕は身をよじって、その手から逃れる。眼帯の中を彼に見られたくなかったのだ。
「見ない方がいいよ。見苦しいし……。君の手が汚れる」
「構わないよ」
しつこく星垂に追われ、僕は仕方なく観念した。
このままでは、水の中に落ちてしまう。
僕が大人しくなったのを確認して、星垂はゆっくりと眼帯を外していった。
腐った僕の右目からは、黄色く濁った泥状の塊が出て、瞼を塞いでいる。
「これじゃぁ、何も見えないね」
なんの感情も無く、星垂は穏やかに言った。
腐っているのだから、どういう状態だって、もう何も見えないだろうに。
そう思いながらも、同情を見せない星垂の態度がありがたかった。
そんな僕をよそに、そっと右目に触れて星垂は尋ねた。
「痛い?」
「別に。痛くはないよ。もう麻痺してしまったみたいだ」
そう言うと、星垂は安心したようにニッコリと笑って水面に手を入れた。
「少し洗おう」
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