星の宿り・真綿の檻

7/17
前へ
/21ページ
次へ
「君の目、どうしたの?」  唐突に問われて、僕は一瞬頭の中が真っ白になってしまった。  そんな僕に星垂は優しく微笑みかける。 「右目。眼帯してるから」 「あ、あぁ。これ。……生まれつきなんだ」  眼帯に触れて答えた。  何故だろう。ひどく哀しくて寂しい気持ちになる。 「見せて」  僕の目の前に膝をつき、星垂は眼帯に手を伸ばしてきた。  僕は身をよじって、その手から逃れる。眼帯の中を彼に見られたくなかったのだ。 「見ない方がいいよ。見苦しいし……。君の手が汚れる」 「構わないよ」  しつこく星垂に追われ、僕は仕方なく観念した。  このままでは、水の中に落ちてしまう。  僕が大人しくなったのを確認して、星垂はゆっくりと眼帯を外していった。  腐った僕の右目からは、黄色く濁った泥状の塊が出て、瞼を塞いでいる。 「これじゃぁ、何も見えないね」  なんの感情も無く、星垂は穏やかに言った。  腐っているのだから、どういう状態だって、もう何も見えないだろうに。  そう思いながらも、同情を見せない星垂の態度がありがたかった。  そんな僕をよそに、そっと右目に触れて星垂は尋ねた。 「痛い?」 「別に。痛くはないよ。もう麻痺してしまったみたいだ」  そう言うと、星垂は安心したようにニッコリと笑って水面に手を入れた。 「少し洗おう」  
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加