KA・E・RU──2日前。

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 夏休み初日、僕は田舎にあるじいちゃんの家に遊びに行く為、朝早くから自転車を走らせていた。  じいちゃんの家までは自転車で2時間はかかるのだが、小学6年生の僕にとってはちょっとした冒険旅行という感じで、田舎道ならではの砂利だらけのガタガタ道も全く気にならないくらい楽しい道のりだった。   ──ガタガタガタガタッガチャンッ、カラカラカラ──   「……ってぇー!あたた……ちくしょう、油断したなー」    砂利道は気にならないと言ったが、実際は想像以上にタイヤをとられていて、僕は見事なまでに転倒した。  擦りむいた足についた砂をパンパンと払い、ゆっくりと自転車を起こしながら周りを見回すと、ずっと走ってきた道沿いを続く林の中に、一部分だけ草が踏み倒された獣道の様な細い道筋を見つけた。   「じいちゃんちまであと少しだし、ちょっと行ってみるか!」    誰か入った形跡からして、カブトムシでも捕れるのかもしれないと考えた僕は林の中へと足を踏み入れた。  緩やかな斜面を登っていくと、途中から石で作られた階段に変わり、古ぼけた小さな神社の様なものが見えてきた。   「入り口は獣道しかなかったのに、誰がこんなとこに来るんだろう?」    その神社は林の中だからか、じめじめと薄暗く不気味な雰囲気を漂わせていた。  しかし、何を祀ってあるものなのか、誰が何の為に、何をお願いしに来るのか興味を持った僕は恐る恐る境内へと入った。  神社の中を覗くと〈蛙〉が祀ってあり、掛けられた絵馬を見ると──   『あの人が私の所に返って来ます様に』 『金返せ○○!』 『無事に行って帰って来れます様に』   ──などと、蛙に〈返る〉や〈帰る〉をかけた願掛けばかり書かれていた。   「蛙って……ただのダジャレじゃん。こんなの本当に御利益あるのかー?」    そう小馬鹿にしたように笑った時だった。
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