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「っ……!!うわぁっ!何だっ!?」
首筋に何か冷たいものが落ちて来た。
ペタッと貼り付く様な気持ちの悪い感触に驚き、僕は首に手を当て、慌ててそれを払いのけた。
──ヒュッ、ベチャッ──
僕によって地面に叩きつけられたそれは、不気味な音を立てて潰れた。
……蛙だ。
「……何だよ、こんな所でタイミング良く蛙が落ちて来るなんて気味悪すぎだろ……。けどたかが蛙か。ははっ、驚かすなよなー」
僕は驚かされた腹いせに、半分潰れたそれを更に靴で踏みつけ、「チィッ」と舌打ちをしながら来た道を戻った。
「とんだ時間の無駄だったな。せっかく朝早く出てきたのに、もうこんなに陽が高くなってるし。ったく、あちーなー」
僕は今あった事を特に気にもとめず、流れ出る汗と夏の日差しに苛立ちながら、じいちゃんの家へと急いだ。
「タケルー!!よお来たなー!暑かったろう!家にスイカが冷えてるから、すぐにばあさんに切ってもらうといいよ」
家のすぐ手前の畑で作業していたじいちゃんが、僕に気付いて大きく手を振って言った。
「あんな所から自転車で来るなんてご苦労さんなことだねぇ。じいちゃん、タケルが来るの楽しみにしとったんよ。」
そう言い、微笑みながらばあちゃんがスイカを持ってきた。
冷え冷えになって果汁のしたたるスイカは、見ているだけで渇ききった僕の喉をゴクリと鳴らした。
けれど……スイカをかじると何故か美味いと感じない。
「?」不思議に思いながらも、僕の為に用意してくれていたじいちゃんの事を考えると不味いとは言えず、甘くも何ともないそのスイカを、僕は全て平らげた。
スイカを食べ過ぎたせいだろうか、僕のお腹は蛙の様ににパンパンに丸く膨れ上がっていた。
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