始まりの始まりの前夜

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動かし続けてきた足を止め、トスンと切っ先を地面に置いた。 切らせた息を整える為に一度大きく深呼吸をする。 吐き出すと同時に、一つ小さく呟いた。 「……はあ、疲れた」 遥かに広がる草原の中心に少年はいた。 この国では一般的な茶色い髪を短めに揃え、それが激しい動きの為かボサボサになっている。 動きやすそうな柔らかい布地の茶色いズボンを履き、手には木で作られた剣を持っている。 今は剣を地面に突き刺して杖にしている。 季節は寒さが少し和らいできた頃。 時刻は今日が昨日に変わった頃。 少年は毎日の日課である、剣の素振りをしていた。 額の汗を拭いながら、少年は空を仰ぎ見る。 「――――今日は満月か」 と、今度は手元に痛みを感じて視線を落とした。 手のひらを見ると、じわりと血が滲んでいた。 「うわ、またマメが潰れてるや。痛いなあ」 しかし、言葉とは裏腹に声色はどこか弾んでいた。 なぜならそれは日々の研鑽の結果。 少年が毎日毎日積み重ねてきた、努力の証だからだ。 汗と血が剣の握りに染み込んで、黒ずんでいるのも同じだ。 全てが彼の努力を物語っている。 「――っくしゅん」 不意に風が吹いた。
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