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やれやれ、と溜息をつきながら僕は職員室から出る。
どうやら授業をサボったのがバレたらしい。
おかしいな、保健室に行くといって教室を出て、既成事実を作るためにちゃんと保健室まで行ったのに。
何故バレたんだろうね。
……まあ、いいか。
どうせ真面目でお節介なクラス委員長あたりが確認でもしにいったんだろう。
そんなことはどうでもいいんだ。仮に過去に戻って説教を回避出来たとしても、僕はきっとそれをしない。
決して説教が好きなわけではなく、つまりそこに至るまでの過程を変えようとも思わないからだ。
少しでも変えてしまえば、あの偶然のような出会いがなくなるような、そんな気がした。
別に相手に惚れただとか、そういう浮ついた感情ではなく、単純に興味が沸いたんだ。
そう、つまり僕は暇を持て余していたんだろう。きっと。
なお悪い。恋愛感情の方がマシだったかもしれない。
そんなわけで、僕は放課後また同じように校舎の片隅に赴いた。
そこには二匹の白と黒の猫が居て、僕に気づくとにゃあと鳴いた。
いやいや、にゃあと言われてもね。
僕は君たちの鳴き声の意味を汲み取れるほど動物に対して積極的な感情を持ち合わせていないんだ。すまないね。
辺りを見回すが、彼女はいない。
仮にいたとしよう。僕は少し引くかもしれない。
こんな場所でいつまでも丸くなっている女子学生がいるのは常識的に考えてありえない。
じゃあ何故僕はここに来たかって……そうだな、猫と戯れに来たんだ。
さあ子猫ちゃん、にゃあと鳴いてごらん。
にゃあ。
白い子猫が鳴く。意外と可愛いかもしれん。
僕は少女が座っていたように腰を下ろそうとして、
止めた。
おいおい、健全な男子学生が放課後ひっそりと校舎の片隅で猫を戯れてたって何の絵にもならないって。
せいぜい土曜日の朝に三分くらいの映像として使われるくらいだ。
馬鹿馬鹿しい。帰ろう。
何故こんなところに来たかって?
日当たりが良かったからだ。春ってのはそういう季節さ。
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