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雨も降っているし、早めに立ち去ろうか。
しかし、これじゃ本当にただの暇人だな。
僕がその場から立ち去る仕種を見せると、野良子が呼び止める。
「なあ、シャム太」
「なんだ、野良子」
立ち止まって振り返る。
「お前はどうやって友達を作った?」
「……は?」
「いや、一般論を聞いておこうとな」
「友達居るんだろ?」
「ああ、居るよ」
「ふむ」
少し考えてみたが、うまい言葉が見つからない。
どうやってと言われても、話しているうちに自然に友達になったり、そもそも友達だと確信した瞬間などないわけで、今でさえもそれはわからない。
まあ、中にはわかりやすいキッカケがあった友達もいるかもしれないが、それは強いて言うなら“どうやって”ではなく“どうあって”だ。方法ではなく過程だろう。
「変な質問だったな。忘れてくれ」
僕が悩んでいることを察して、野良子は質問を取り消した。
「帰るんだろ? 引き止めて悪かった」
「アンタはもう少しいるのか?」
「いいや」
野良子は視線を外して、僕との距離を傘で遮る。
「少しじゃない。ずっとだ」
雨の冷たさが、寒気のようなものに変わって僕の体温を下げていた。
「冗談だ。じゃあな、シャム太」
僕は何となくその場に留まりたい気持ちになったが、“そこに留まる方法”を知らなかった。
僕が去るのを察して、足元の三毛猫は彼女の傘の下に移動する。
雨音が僕の足音を奪う。
彼女は振り向かず、僕は立ち止まらず。
雨音に混じって、なき声が聞こえたような気がしたのは、気のせいだったろうか。
僕を呼び止めるかのような、凛とか細い野良猫のなき声が。
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