殷王朝第30代帝乙(ていいつ)第3王子・季子(きし)

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こうして季子は寿王(じゅおう)と名を改め、皇太子の地位に就いた。 …それから数年の月日がたった。 太師聞仲による教育は益々厳しさを増していた。 聞仲 「寿王様、どうしたのです。 最近は大人しくなったとはいえ、未だ周族・羌族共に侮れぬ力を持っているのです。 こんなことでは両族に国を奪われますぞ。」 寿王 「ぬ…まだまだー。」 カンカンギィン 今日も一段と厳しく武芸の稽古に励む寿王。 因みに太師聞仲の言う周族とは西岐周辺に分布する民族で、後の周王朝とは別のもの。 聞仲 「…ここに夏王朝は滅亡し、殷王朝が誕生したのです。」 寿王 「それはもう何度も聞かされているから判る。」 聞仲 「では、今度は治世のお勉強としましょう。」 寿王 「まだやるのか!?」 聞仲 「当然です。 寿王様、世を治めることは大変なことなのですぞ。 骨身を削り、睡眠時間を裂いて政務に励まねばなりません。 そうで無ければ夏の傑王(けつおう)と同じように国を失いますぞ。」 傑とは、夏王朝最後の王で、殷の紂、周の幽と共に中国三大悪君に数えられている。 寿王 「わ、判った判った。 …全く、聞仲の小言には参るわい。 寿王 「いや、なんでも無いぞ。」 寿王は聞仲だけには頭が上がらなくなっている。 梅伯(ばいはく) 「寿王様、太師、大変です。」 聞仲 「どうしたのだ梅伯殿。 上大夫がそのように取り乱しては部下に示しがつかぬぞ。」 上大夫とは、大夫の筆頭で、日本の戦国時代の筆頭家老がこれに相当する。 梅伯 「そのようなことを言っている場合では御座らん。 陛下がお倒れになったのですぞ。」 聞仲 「陛下が!?」 寿王 「父親が!? それで、容体は?」 梅伯 「はっ、現在は医者に診させているところです。」 寿王 「お部屋は? すぐに案内しろ!」 梅伯 「はっ、こちらです。」
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