不本意な結果における形骸化された議論の結末

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 長方形の箱を小脇に抱えている。 「よーし!! じゃぁ、やるぞ!」  どん、と箱を教卓の上に置き、加藤は楽しげに言った。  箱の中からは数十本の割り箸の先端が見えている。 「見ての通り、クジ引きだ。棒は人数分ある。赤が出たら屋台組な。順番に並んで引けー!」  順番が早い方が当たりを引きやすい。  全員がそう考え、脊髄反射とも思えるスピードで席を立ち、押し合いながら教卓の前に並んだ。  硅と壱伊は後ろの席だった為、少し出遅れたものの、なんとか最後尾は免れた。  列は次々と流れ、その度に悲喜こもごもの声が上がる。  順番が近付くにつれて、緊張も高まる。顔の強張りに気付き、硅は頬を撫でほぐした。  性格上、大勢の人の前で何かするのは苦手だ。しかも、演じる、など小学校の学芸会以来で、上手くやれる自信も無い。  何としてでも、当たりを引かなければ。  そんなことを考えているうちに、順番が回って来てしまった。 「お。次は崎坂か」  ニヤリと笑って加藤がクジを差し出すと、硅は緊張した面持ちで息を呑んだ。  
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