184人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだ。顔、固まってるぞ?そんなに緊張することかぁ? 人生懸かってる訳でもあるまいし」
「……先生には、わかんないよ」
深く溜め息をついて、硅はうなだれた。
何度か迷った後、棒を選び取る。
「硅。どっちだ?」
楽しそうに壱伊が硅の肩越しに結果を見やる。
しかし、硅はガックリと肩を落とし、重く沈んだ声で、
「……ハズレ」
とだけ呟いた。
割り箸の先端には何も塗られていない。
残念な結果に、壱伊も小さく溜め息をつき、優しく硅の背中を叩いた。
「ま、仕方ねーって。見てろ。俺がカタキをとってやる」
「カタキって。どうやって?」
「俺が見事当たりを引いてやるってことだよ」
「なんだよ、それ。結局……」
「あーあー。お前らな。喧嘩なら、クジが終わってからにしろ」
口喧嘩になりかけた所を加藤が制止する。
「後がつかえてんだ。高村、早く引け」
その言葉に壱伊が振り返ると、苛立たしげなクラスメイトと目が合った。
すぐさま向き直り、慌ててクジを選ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!