184人が本棚に入れています
本棚に追加
誰の物だろうとひっくり返してみたが、何も書かれていない。
中に何か手がかりがあるかもしれないと思い、仕方なく壱伊は手帳を開いた。
ページいっぱいにメモ書きがされてある。丁寧に並べてでは無く、空白を埋め尽くすように言葉が散らばっている。
革命の姫。暗黒の騎士。薔薇。英雄。力の解放……。
(ゲームか何かの攻略メモか?)
思いながら、次のページをめくる。
今度は登場人物のまとめのようだ。細かく設定が書き込まれており、側には簡単ながらもイラストまで描かれている。
「これって……うわっ!?」
ある予想が浮かんだ瞬間、乱暴に手帳を奪われた。
呆気にとられながら顔を向けると、そこには荒い息の少年が立っていた。頬が紅潮している。
「……安達?」
その少年は、壱伊と同じクラスの安達陽平だった。
決して活発な方では無い。壱伊と殆ど変わらない背丈の筈だが、申し訳無さそうに背中を丸めているせいで実際より低く見える。
彼には内気で気弱な印象しか無い。だから、彼らしからぬその行動に、いささか壱伊は驚いていた。
「あ……。ご、ごめん。……これ、僕のなんだ」
手帳をポケットにしまいながら、安達はボソボソと呟くように言った。
最初のコメントを投稿しよう!