不本意な結果における形骸化された議論の結末

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 誰の物だろうとひっくり返してみたが、何も書かれていない。  中に何か手がかりがあるかもしれないと思い、仕方なく壱伊は手帳を開いた。    ページいっぱいにメモ書きがされてある。丁寧に並べてでは無く、空白を埋め尽くすように言葉が散らばっている。  革命の姫。暗黒の騎士。薔薇。英雄。力の解放……。 (ゲームか何かの攻略メモか?)  思いながら、次のページをめくる。  今度は登場人物のまとめのようだ。細かく設定が書き込まれており、側には簡単ながらもイラストまで描かれている。 「これって……うわっ!?」  ある予想が浮かんだ瞬間、乱暴に手帳を奪われた。  呆気にとられながら顔を向けると、そこには荒い息の少年が立っていた。頬が紅潮している。 「……安達?」  その少年は、壱伊と同じクラスの安達陽平だった。  決して活発な方では無い。壱伊と殆ど変わらない背丈の筈だが、申し訳無さそうに背中を丸めているせいで実際より低く見える。  彼には内気で気弱な印象しか無い。だから、彼らしからぬその行動に、いささか壱伊は驚いていた。 「あ……。ご、ごめん。……これ、僕のなんだ」  手帳をポケットにしまいながら、安達はボソボソと呟くように言った。  
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