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小さな窓があるのに気付き、足を止める。おかしい。あんな所に窓などあっただろうか。違和感を覚え、硅は遠目で窓を見つめた。向こう側に小さく何かが見える。
(あれは……橋?)
思った瞬間、硅はその場所にいた。冷たい風が吹き抜け、髪を揺らす。
「え……と……」
困惑して硅は左右を確認した。車十数台分が楽に入りそうなくらい幅の広い橋だ。
呆然としていると、突如頭上から鋭い声が飛んできた。
「危ねぇぞ、硅!! 横に跳べ!!」
「え、え?」
混乱しつつも既に体は反応していた。反射的に左側に跳び、そのまま転がる。
ゴロゴロと回転し、体を起こして体勢を整えると、そこにはサーベルを持ったまま倒れ伏した少年と大剣を手に肩で息をしている壱伊がいた。そのすぐ側で赤い花弁が風に吹かれて揺れている。
「イチ……?」
「よう、硅。大丈夫か?」
硅の小さな呟きに気がつき、壱伊はニッと笑って顔を上げた。歩み寄りながら、
「ボーとつっ立ってんじゃねーよ。マジで危なかったんだぞ」
「助けてくれたんだ……。ありがと」
混乱したままの頭で硅は礼を言った。
「でも、一体どこから来たの? 僕ちょっと今わけがわからないんだけど」
「上から」
と、壱伊は上空を指差して答えた。
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