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言って、壱伊はまた空を指差した。橋の、やや上の方に何か浮いているのが見える。小さくてよくわからないが、彼の言う『階段』というのはあれのことだろう。
「それで? ここにはどうやって?」
「うん……。皆消えちゃってさ、ホールから出ようと思ってあちこち見てたんだ。そしたら小さい窓があって、この橋が見えた。そしたら、いつの間にか……」
「ここに来てたってわけか」
壱伊は小さく溜め息をついて頭を掻いた。
「久世や宮村もどこかに飛ばされてるんだろうね」
「多分な」
橋は遠くまで延び、その先端は霞んで見えない。硅は欄干に寄って下を見下ろした。
「うわ……」
広がる雲海に思わず声が漏れる。
「すげーだろ?」
傍らに来て、壱伊はニッと笑いかけた。雲海に引かれた一本の白線。それを目がけて彼は飛び降りたのだ。
「ほんと、よく飛んだよね」
彼の無鉄砲さは知っていたが、まさかここまでとは。感心を通り越して呆れてしまう。すると、壱伊は遠くを見るような目で、
「お前が見えたからなぁ」
と言った。
「僕が?」
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