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「そのツノ見て、一発でお前だってわかった。そしたらお前に斬りかかって来てる奴がいるじゃん? こりゃヤベーなって思ったら、勝手に体が動いてたんだ」
「無茶して」
「ま、いつものことだ」
自分で言うか、と硅は胸の裡で呟いた。冷たい風が吹き抜け、頬や髪を撫でる。
「……別に、いいのに」
「何が」
「僕のことでイチがリスクを負う必要はないってこと」
やや、間があいた。壱伊は小さく息を吐き出して、
「俺が勝手にやってんの」
「それでもさ」
答えて、硅はすぐに言い直す。
「ううん……違う。だから、かな」
「だから?」
「イチはいつだって一人で突っ走るから。いつかそれで潰れてしまう気がして……怖いんだ」
やけに素直な自分に驚く。これも市東の仕業なのだろうか。心の中に沈んでいた壱伊への気がかりが次々と口をついて出た。
そんな彼の話を壱伊は黙って聞いていたが、やがて口元に笑みを浮かべると前を向いたまま、
「バーカ」
と言って、硅の頭を軽く撫でた。
「大丈夫だよ」
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