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「…………」
硅は言葉を返さなかった。『大丈夫』という単語を吐く時の自分を思い返すと、とても彼の言葉をそのまま信用する気にはなれなかったのだ。
ややして、壱伊はまた繰り返した。
「大丈夫だって」
「……うん」
「……ま、なんかあった時には話すからさ。だからあんま考え込むなよ」
「うん」
「おめーに考え事は似合わねーんだから。慣れねーことしてっと、そのうち頭から煙が出るぞ」
すると、硅は吹き出して笑った。
「ひっでー」
つられるようにして壱伊も笑う。
「だってそうだろ? お前が難しい顔してたらこっちまで暗くなる。難しいこと考えなきゃいけない気になっちまうんだから」
「なにそれ。どういうこと?」
「心配してんだよ、俺も」
「…………」
「お前もね」
と、壱伊は欄干にもたれて続けた。
「何かあったら俺らに言えよ。大したことできねーかもしれんけどさ……力になっから」
「……うん」
「悩みすぎてっとハゲるぞ。お前は髪の毛細いんだから、特に気をつけねーと……」
「うるさい」
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