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「好奇心、猫をも殺すって言うよ。久世に知られたら……」
「大丈夫だって。未だにバレてねーんだから。それに、結果的にはもう殺されたようなもんだし」
「どういうこと?」
「あいつが部屋を出たの見計らって、急いで捜索したのよ。ベッドの下とか本棚の裏とか。でも、やっぱそんなベタな場所には隠してなくてさ」
つっこむ気が失せてしまった硅は、黙って話を聞くことにした。
「で、あいつの本棚って、わけわかんねー本がびっちり詰まってんじゃん。だからその奥に隠してあんじゃねーかって見てみたわけ」
「……それで? 見つけたの?」
「言ったろ? 好奇心のせいで殺されたって。バッチリ見つけたよ。……『鬼平犯科帳』全二十四巻をな」
「…………」
奇妙な間があいた。ややして、硅がポツリと、
「好きなんだ、鬼平……」
「あいつ、DVDも全巻揃えてるぞ。絶対」
いやらしい本を捜索して、見つけたのが男らしい鬼平では、確かに殺されたようなものだ。撃沈し、捜索する意欲を失った彼は、それ以後久世の部屋を物色することが無くなったのだという。
久世のプライベートは火付盗賊改方によって守られた。
「他にもそれっぽい本が並んでたぞ。関ヶ原だの城なんとかだの。あいつ一体何なの」
「全面的にイチが悪い」
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