混戦―闘争か逃走か―分岐点での選択とパラダイムシフトの可能性

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 唖然としている久世の背後を守りながら、壱伊もニッと笑った。  久世は十人ほどの敵に囲まれていた。全員一様に目が血走っており、尋常ではない。中には顎先から涎を滴らせている者までいた。 「すげぇ数。お前、ずっとこれ相手してたの?」 「三人くらいは斬ったかな。でも、いい加減戦いっぱなしで疲れた」 「三人? なんだ、それじゃ俺と同じか」 「崎坂は?」 「僕は……」硅は口ごもった。おずおずと、「……一人」  二人は敵を睨みつけながら沈黙した。たまらず硅がわめく。 「し、仕方ないだろ! 一人しか襲ってこなかったんだから! もう一人来たけど、イチが倒しちゃったし!」 「そうなのか?」  と、久世は肩越しに壱伊を見た。 「危機一髪。危なかったんだぜ、こいつ」 「よくやった」  向き直り、久世はニヤリと笑う。 「味方は多い方がいい」 「足手まといにならないよう頑張ります……」  
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