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呟くように言って硅は剣を構え直した。息を殺し、目だけを動かして周囲を窺う。
石造りの暗いホールだ。壁に均等に据え付けられたランプの炎が、列をなして揺れている。ここは地下なのだろうか。窓が無いため余計に閉塞感が漂い、空気も澱んでいる。薄気味悪い空間だ。思って、硅は深く息を吐き出した。
「……宮村は大丈夫かな」
「ここにいねーってことは、まだどっかで戦ってんのかもな」
「僕は君達がどうやって来たかがすごく気になるけど……今はそれどころじゃない。気を引き締めろ、来るぞ!」
獣のような唸り声を上げ、正気を失った兵士の群れが薄闇の中から突進してくる。
「うわ!」
ガツン、と刃と刃がぶつかり、腕に衝撃が走る。鍔競り合いをしながら硅は相手の顔を見つめた。川嶋と同じだ。目を見開き、低い呻き声を上げ、口元から涎を垂らしている。――これは人間か?
思わず吐き気を催したその時、ふと白いホールで見た切り絵を思い出した。姫を取り囲んだ獣の群れ。なるほど、今の彼らは獣のようだ。理性を失い、ただ本能のままに動いている。
そんなことを考えていると、突然横から何かがぶつかってきた。勢いにおされ、硅は小さく悲鳴を上げて倒れ込む。と、同時に細剣が右手から離れ、円を描きながら床を滑っていった。
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