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「ちょっ……! やめ……っ!」
少年はそのまま馬乗りになり、片手で硅の首を掴んだ。硅は必死に暴れてもがくが、少年は離れない。その細い身体からは想像できないほどの強さで硅の首をぎりぎりと締め上げていく。
「ぐ……っ!」
息ができず、呻くことしかできない。硅は、朦朧とした意識の中で高々の振り上げられるナイフと天井に張り巡らされた真っ黒な布を見た。――あんな所に、何故?
「硅!!」
壱伊の叫び声にハッと我に返り、とっさにナイフを払うように腕を振った。
瞬間。凄まじい風とともに黒い影が走った。と、同時に、硅に馬乗りになっていた少年が風圧で一気に吹き飛ばされる。そして壁に激突すると、床に突っ伏したまま動かなくなった。
一方、硅は喉元を押さえ、軽くむせながらヨロヨロと身を起こしていた。さすがに異常を感じたのか、彼に襲いかかろうとする者はいなかった。困惑した様子で、遠巻きに眺めながら狼狽えている。
「硅!!」
動きが鈍くなった相手を薙ぎ払い、その薔薇を散らすと、壱伊は真っ直ぐ硅のもとへ駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「平気平気。……ちょっと焦ったけど」
答えて、硅は弱く笑う。差し出された手に掴まり、立ち上がりながら、
「今の、見た? さっき僕……」
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