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ともあれ、薔薇を散らせば終わる。硅は手首を使い、胸元に咲いた薔薇を狙った。だが、敵は軽い身のこなしで後ろに飛び、それをかわす。
「このままじゃ埒が明かねぇな……。よし! 硅、久世! 少しの間こいつらを引きつけてくれ!!」
言うか早いか、壱伊は背を向けて駆け出した。力任せに剣を振り、道を作る。
「……って、イチ! 何するつもり!?」
「良いこと! 一網打尽にしてやるよ!」
そう言って壱伊は闇の中に消えていった。すると、やがて壁際の階段を駆け上がっていく彼の姿が見えた。
「あそこに階段なんてあったのか……。暗くて全然気づかなかった」
「崎坂!」
キィン、と背後で音がし、とっさに硅は振り返った。
「久世!?」
「背中ガラ空き。油断してるとすぐにやられるよ。……君がいなくなるのは困る」
「ごめん」
と言って、硅は久世と背中を合わせた。
「イチの奴、一体何する気なんだろ」
「さぁ。どうせまた妙なことを思いついたんだろ」
「……久世、ずっとこうして一人で戦ってたの?」
ジリジリと間合いをつめてくる軍勢を睨みながら、硅はそっと尋ねた。
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