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「まぁね。でも、多勢に無勢は嫌いじゃない」
「さすが時代劇マニア」
「何それ」
「歴史もの、好きなんでしょ。本たくさん持ってるって聞いたよ」
「……マニアって言われる程は持ってないよ」
「今度何か貸してよ。面白いやつ」
「わかった」
頷いて、久世は襲いかかってきた剣を受け止め、押し返した。隙をついて踏み込む。そして一閃。
ザッと赤い薔薇が散り、少年が倒れる。
その音を背後に聞きながら硅も負けじと剣を振る。が、どんどん攻め手の数が増え、防戦一方になっていることに気付く。
「イチ! まだ!?」
叫んで、チラリと上を見上げた。闇の中にヒュンヒュンと赤い光が勢いよく飛んでいる。
「悪い! もう少しだけ耐えてくれ!」
光は天井に張られた暗幕の端を目掛けて飛んでいた。もう一方の端から小さく火の手が上がっている。
「高村の奴、ランプをぶつけてあの暗幕を落とす気だ」
「そういえば、一網打尽にしてやるって言ってた……。相変わらず、無茶苦茶だなぁ」
呆れて硅は返した。だが、無理な気はしなかった。壱伊ならできる。根拠はないが、そう確信できた。
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