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硅は思わず唾を飲み込んだ。だが、佐倉は平然としている。薄く笑って、
「替え玉とはね。カツラ、どう見ても被りきれてねーけど、あんな状態の奴らじゃ簡単に騙されるよな」
「そう言うおめーだって、一瞬騙されてなかったか?」
せせら笑うようにそう言うと、壱伊は硅の頭からカツラを取って久世のもとへ歩み寄った。そして、手にしていたカツラを無造作に久世に被せる。
「うん。やっぱり姫はこうじゃねーとな」
「姫だの何だの言ってる場合かよ」
呆れて佐倉は小さく息を吐いた。
「役は役。まだ幕が下りてねー以上、ちゃんとしねーとな」
もっともらしいことを言っているようだが、本心は違うだろう。思って、硅は溜め息をついた。これは単純に、久世に対する嫌がらせだ。
「役、ね」
呟いて、佐倉は口元を歪めた。両腕を広げ、
「じゃあ、早く幕を下ろせよ」
「佐倉……?」眉を寄せて、硅。
「とっとと薔薇散らして終わらせろっつってんだ。……抵抗はしねー。早くしろよ」
と、佐倉は持っていた長剣を捨てた。カラン、と乾いた音が天井に響き渡る。
三人は固まったまましばらく沈黙していたが、やがて久世が静かに口を開いた。
「……君は、それでいいの?」
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