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「なに?」
「あんなにこの勝負にこだわっていたのに、簡単に諦めて。それでいいのかって訊いてるんだよ」
「はぁ? つーか、この状況見てみろよ。味方なんか一人もいない。しかも、ここはお前達に有利な場所だ。こんなんで……俺だけで何ができるっつーんだよ」
「そうやって逃げるんだな」
「あ?」
久世の呟きに反応して佐倉は目を上げた。
「味方がいない、場所が不利……。それがどうした。言い訳考える暇があったら、不利を覆す策を一つでもいいから考えろよ」
すると、佐倉は目を逸らし、冷たく笑った。
「簡単に言ってくれるよな」
「簡単にできないから諦めるのか。それじゃ何も解決しない……いや、それも一つの解決策か。君自身は何も変わらない。ただ周りだけが変わっていく。君を置き去りにして」
「黙れよ」
佐倉は押し殺した声で言った。が、久世は尚も続ける。
「きっと彼女も変わっていく。……あぁ、ごめん。違うね。『元』彼女だものね、あの人は。君とはもう無関係だ」
「黙れって言ってんだろ!!」
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