不本意な結果における形骸化された議論の結末

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   今日の午後の授業は、全てホームルームに変更されている。  三週間後に迫った学園祭の準備の為だ。  教室内は気怠さと気楽さが漂い、緊張感を失った生徒達の騒がしい喋り声に満ちていた。  その様子に硅は、夏に嫌という程聞いた蝉の大合唱と驟雨の音を思い出した。  あれからもう半月経つのか、とぼんやり思う。 「オラー。お前ら、静かにしろー」  パンパンと両手を鳴らして、担任の加藤が面倒臭そうに入って来た。  三十代の、まだ若い教師だ。恋愛面で様々な不名誉な逸話を持ち、その一方で、生徒達からは陰で「カトセン」と呼ばれ、それなりに親しまれている。 「これから梢瑶祭の組分けをする」  教壇に立ち、開口一番そう告げると、生徒達のざわめきが一層高まった。  硅と壱伊の二人も例外では無い。 「なぁ、硅。どう考えても屋台組だよな」  後ろの席から身を乗り出して壱伊が尋ねる。  硅はニヤリと笑って、 「当たり前だろ」  と、答えた。  梢瑶祭の趣向は一風変わっている。  二つのクラスが合同で出し物をするのだが、その中で「屋台組」と「演劇組」に分かれる。  そして、屋台組は売上げを、演劇組は賞を懸けて争うのだ。  その後、それらの成績を総合し、一番高い成績を残したクラスに、最優秀賞として「学食特製ラーメン三日間タダ券」が贈られる。  何かと無気力になりがちな生徒達を奮い立たせようとする、教師達の涙ぐましい努力と料理長の粋な心意気が窺える企画だ。  
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