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「好きですっ!」
屋上。学園内で最も空に近い場所だった。
空を燃やす夕焼けと、融けた紅霞が創り出す幻想的な景色。彼方には一筋の飛行機雲が伸びていた。
そんな風景を背に、向き合っている一組の影。
影の一つは少女だった。繊細に整った顔立ち。雪のように白い肌。そして、そよ風に揺れる、長く艶やかな髪。脆さ、儚さすら覚えるほどに、美しい少女。ガラス細工を彷彿させる。
彼女の顔に、朱が差していた。それは、同色の空の所為だろうか。はたまた、別の理由があるのか。
答えは後者だった。別の理由というのは、少女と向き合っているもう一つの影の存在にある。
それは少年だった。背の高い、いかにもスポーツマンといった印象の少年。野球のユニフォームを着用している事から、野球部であることが推測できる。
「私、ずっと前から貴方の事が好きですっ! 私とっ、付き合ってくださいっ!」
少女の大きな瞳に、力がこもった。うっすらと涙すら浮かんでいるようにも見える。少女の身体は、小動物のように小刻みに震えていた。
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