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無理もない。相手に気持ちを伝えるという行為は、相当の勇気を必要とするものだ。少女は唇をぎゅっと噛み締めた。
少年は表情を曇らせた。そして、静かに口を開く。
「ごめん。俺、もう付き合ってる人がいて」
少年の言葉を聞いた刹那、少女の表情が、不安から悲しみへと変わった。
「そ、そう、なんですか。そ、そうですよねっ! ご、ごめんなさい、私、変なこと言って……」
少女はそういい終えると、顔を伏せた。温かい雫が一粒、首筋に落ちる。
「で、でも、諦められないよ」
少女の口から、嗚咽が漏れた。次々と涙が溢れ出し、少女は静かに泣いた。
「ごめん」
もう一度、少年が言う。
少年にも罪悪感があるのだろう。バツの悪そうな表情を浮かべていた。
「わ、私じゃ、だめですかっ? 私では、あなたの恋人の代わりにはなれませんかっ?」
そんな少年に、再び少女は投げかける。
「わ、私、本当にあなたのことが好きなんですっ! この気持ちだけは誰にも負けませんっ! だ、だからわ、私とっ! 付き合ってくださいっ!」
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