さまーばけーしょん

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 旬にも、それなりに予定があった。残念ながら、恋人と思い出作り、といった類のものではなかったが。  事の発端は、夏休みの前日の夜だった。旬宛に、一通の手紙が届いたのだ。差出人は、幼い時にお世話になった伯父だった。 「ちょっと頼みたい事があるんだが、こっちに出てこられないか?」  手紙には短くそう綴られていた。出てこられないか? と言われても、ここから伯父の家までは、電車で行って三時間は掛かる。だが、色々とお世話になった伯父の頼みだ。断るわけにもいかない。  そんな事情から、旬は故郷である『藍沢町』へと帰ってきたのだった。  たった二年程しか離れていないはずなのだが、何故かとても懐かしく思えてしまう。 「と~っ!」 「んあっ!」  旬の背中に、突然衝撃が走った。いや、衝撃と呼ぶには可愛すぎるかもしれない。何か柔らかい、ふにゃ、とした感覚が背中に触れたといったほうがしっくりくるかもしれない。それも、かなり微量なサイズだった。 「な、なに?」 「やっぱり……! やっぱりお兄ちゃんだっ! お兄ちゃん、お帰り~っ!」
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