さまーばけーしょん

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 夏月は伯父の家に着くなり、大きな声で挨拶をした。相変わらず元気の良い女の子である。 「えっと、おじゃましま……」  そう言いかけた旬を、夏月が睨む。本人は「ドスの効いたヤクザな顔」をモチーフにした表情を作っているらしいが、はたから見たら、ただ拗ねているだけにしか見えない。 「違うでしょ? お兄ちゃん?」 「な、何が?」 「ここは、お兄ちゃんのお家なんだよ?」 「い、いや。やっぱり、久しぶりだからさ。それに、本当の家っていうわけじゃあ……」  そう反論する旬だったが、相変わらず夏月は旬を拗ねたような表情で見つめていた。旬は観念し、素直に「ただいま」と挨拶をした。 「お帰りなさい! お兄ちゃん!」 「遅かったな、待ちくたびれたぞ」  そんな旬を、伯父は快く迎えてくれていた。隣に伯母の姿もある。 「旬ちゃん、待ってたわよ。……あら? あらあらあら! しばらく見ないうちに、こんなにいい男になっちゃって~っ!」 「あ、あはは」
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