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「ほら、疲れたでしょう? 早く座って座って!」
伯母は、旬を居間に入るよう促した。そして自分は、「お茶を入れるわね」といってカウンターへと消えた。
「どうだ? 久しぶりの故郷の感想は?」
投げかけられる、なんの変哲もない言葉。それは温かく、どこかこそばゆい、家族の言葉だった。
「変わりませんね、ここは」
「そうだろ? まあ、俺的にはもうちょっと飲み屋とかが建ってくれると嬉しかったりするんだがな」
がはははは、と豪快に伯父が笑う。
「なにぶん、田舎だしな。仕方ないと割り切ってるさ。っとまあ、おしゃべりはこのくらいにして、飯にしよう飯!」
久しぶりの故郷での夕食の団欒は、旬にとってとても心休まる時間だった。伯母は旬の好物を覚えていてくれたらしく、メインディッシュはトンカツだった。
「それでな、お前に頼みたい事というのがな」
食事中、何気ない会話の間に、伯父が旬に切り出した。
「たまたま応募した懸賞にな、見事当選したんだ」
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