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伯父はそう言うと、何かのチケットのようなものを、旬にも見えるようにチラつかせた。
「なに、ちょっとした旅行のチケットさ。本当なら、家族全員で旅行に出掛けたいところなんだが、何しろ夏月が……今年は受験生だ」
先ほども触れたように、夏月は中学三年生。今年は受験の年なのである。
「だから、一緒に連れて行くっていうワケにもいかなくてな。三日間でいいから、勉強を見てやって欲しいんだ」
なるほど。さすがに受験生の娘を引き連れて、のんきに旅行など行けやしない。だが、せっかくのチケットだ、無駄にするのはもったいない。
要約すると、家を留守にする間、夏月の面倒を見て欲しい、といったところだ。
「ダメか?」
「いや、そんな。ぜんぜん構いませんよ。構いませんけど……」
さすがに、若い男女が一週間も一つ屋根の下に二人っきり……というのはまずい気がする。
「ああ、その点に関しては大丈夫だ。もう一人、特別ゲストを呼んであるからな」
そう言うと、伯父の口元が微妙にニヤける。何かよからぬ事を企んでいる証拠だった。
「ま、そういうワケだ。頼んだぞ!」
伯父は旬の肩をポンポンと叩くと、再び夕食のおかずに手を伸ばし始める。
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