とある一日の猫の旅

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さて、陽射しも中々いい感じになってきた事だし、ちょいと散歩にでも行きますか。   我が輩はこの家に飼い猫として飼われているわけだが、この大きな玄関は我が輩には開けられないからね。   縁側でいつも開け放たれている網戸が我が輩の玄関さ。 ふむ、本日もいつも通り開いているようだね。   おや、ご主人は休日にも関わらず新聞を読むだけかい? 天候も良いのに勿体ないとは思わないのかい?   まぁ我が輩には関係ないがね、ではご主人、行って来るぞ。   我が輩が飼われている家のある地域は、どうやら人間界では下町と呼ばれているようだ。 ふむ、確かに広い通りも無く行き交う車も少ない。 年を重ねてきた我が輩には全く有り難い話さ。   おっと、これは紹介が遅れました。 我が輩はムーという者だ、あっ、いや、猫だ。 ムーという名は、我が輩がまだ生まれて間もない頃に、ムスッとした表情だったかららしい。 我が輩はそんなに無愛想な猫ではないぞ? 町内の若手猫達には現に慕われているからな。   話が逸れてしまったな、今はどうやら春という季節らしい。 詳しくは知らないが、過ごしやすい季節である事は確かだ。 陽射しは暖かいし、空気も澄んでいる。  
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