とある一日の猫の旅

3/10
前へ
/10ページ
次へ
脇道に生えている花々や草でさえ生き生きとしていて、新緑の香りは悪くないねぇ。   ん?この匂いはまさか……やはりあそこからだったか。 佃煮屋のおばちゃんは今日も笑顔で接客している。 笑顔よりも、我が輩はその盛られている方に興味があるのだが。   「おや、安藤さんとこの猫ちゃんじゃないかい。食べてくかい?」   おばちゃんが手にしたのは煮干し、佃煮屋が作った煮干しさ、絶品以外の何物でもない。 是非いただくよ。   「美味しいかい?……おや、もう行っちゃうのかい、またその内来なぁー」   うむ、美味だったよ、おばちゃん。 今度も是非寄らせてもらうからね。 ニャフン、失礼、これはくしゃみでは無く咳払いさ。 では改めて、おばちゃん?我が輩は猫ちゃんと言われるほど若くは無いぞ。   さて、小腹も満たされた事だし集会所に向かうとすっ!おっと!   「ん?おぉ、わりいわりい」   近くで水やりをしていた親父が、残水を投げ捨てた。 その時の水が、我が輩を直撃するところだったじゃないか、全く、気をつけて欲しいもんだね。 我が輩は水が嫌いなんだ。   あー……足の毛が濡れてしまったじゃないか、仕方ないなぁ舐めるか!
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加