第1章 訪れの夜と交わした契り

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「っく…ひっく」 七歳くらい…まだ小さな男の子が、公園の真ん中で泣いている。 「どうしたんだろう…」 心配だったので話しかけてみることにした。 茂みの方を回って、入り口から公園に入っていく。 後ろから近付いて、 「どうしたの?」 私はその子の隣に立った。覗き込んで話しかける。 「…ひっく、っく…」 「お母さんとはぐれたのかな?…迷子になっちゃった?」 腰を曲げ、同じ目線で問うけれど…全く答えてくれない。男の子は泣きじゃくったままだ。 「う…っ」 涙をぼろぼろ流す黒髪のその子に、私は手を伸ばした。 頭に手を置いて、ゆっくりと撫でる。それから背中をさすってあげて、 「大丈夫だよ。怖くないから…」 その瞬間。 ガシッ。 「…え」 ギリギリと右腕を締め付けられる感覚に、痺れを覚えた。 男の子が私の腕を小さな手で掴んでいる。そして、悪魔のように口の端をつり上げて笑っていた。 「な…」 「キャハハハッ」 男の子は機械のような甲高い笑い声を上げると、鋭い牙で私の腕に噛みついた。 走る、熱い痛み。 「っう!?」 反射的に身を引いて、すぐさま牙から逃れる。 噛みつかれた箇所からは血が流れていて、ポタポタと地面に滴り落ちた。 「な、なに…!?」 「キィ、キッ…キャハ」 男の子の首ががくんと折れ曲がり、顔や首に筋が立ってゆく。目は虚ろで、指先からは鋭い爪が伸びていた。 足が、すくむ。 普通じゃない。 恐怖から動けなくなって、体の震えが止まらない。 その間にも男の子…いや、人の形をした獣みたいな何かが、近寄ってくる。 口から垂れている唾液と、牙。 「い…や…」 叫ぶにも声が出なくて、距離は縮まっていくばかり。 「キ…キヒヒッ!!」 だん、とそれが跳躍して、一気に近付いてきた。 振り下ろされる、爪。 直撃する。 …私、死ぬの? いや、だ。 死 に た く な い !!
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