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「月影さん、立って。…僕から離れないで下さい」
「あっ…う」
ぐいっと腕を引っ張られ、噛まれた傷が鈍く痛んだ。
「怪我をしたんですね…我慢して」
立ち上がって、皆守くんの腕の中に収まる。…なんか本当に守られてるって感じ。
…すると、さっきまで赤いヘドロが這い出ていたあの裂け目から、黒い手が伸びていた。
「まだ、来るの…」
「…」
皆守くんは光沢の施されたその銃を裂け目に向け、まず一発放つ。
ダアアン、と耳をつんざくような轟音と、弾丸を飲み込んでいく裂け目。
「足りるかな…予備を持ってくるんだった」
ボソッと呟いて、皆守くんが胸ポケットから弾丸を取り出し、銃のなんか変な穴の開いた回す部分にはめ込んだ。
カチッとなんか音がして、皆守くんが銃を裂け目の方に再び構える。
…今思えば銃刀法違反じゃ?
「…オ…オオオ…」
奇声を上げて裂け目から這い出るのは、黒い影のようなもので、中央に小さな穴みたいなのが2つあった。
グシャ、ベキッと鈍い音がして、その黒い化け物から無数の脚みたいな物が生える。
ちなみにその怪物は、三メートル位の大きさだった。
「キツいかも…」
そう言うと気だるそうに皆守くんは引き金を引いて、まだ完全に地に降りてない怪物に銃を連射した。
「グゥアアア!!」
その衝撃で裂け目からドシャ、っと怪物が地面に落ちる。
「ひゃ!?」
グラッと地面が揺れた。
ダンッ、ダンッ
地面を這っているその不気味な黒い巨大な影に、皆守くんはまだ発砲している。
ダン、カチッ、カチッ。
「…ちっ」
やがて弾が無くなって、カチャカチャという音だけがする。
化け物はまだ生きているのか、ふしゅううと荒い呼吸をしてこっちに近付いてきた。
ドス、ドスと歩く度地面が揺れて、間合いが狭まっていく。
「…ヤバいです」
そんな時、皆守くんがぽつりと漏らした。え?、と私が聞き返すと、
「武器がありません」
真顔で皆守くんが言った。
…ええぇーーー!?
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