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「どどっ、どういうこと!?」
「弾が切れました」
皆守くんは平然とした顔で言うと、使えなくなった銃をポーチにしまった。
「そんな…どうしようぅ…」
私は怖くなってギュッと皆守くんのシャツを掴んだ。怪物はさらに近付いてくる。
「一つだけ、手がありますよ」
え?
クスッと微笑を浮かべ、皆守くんが私に向き直る。
「僕の奴隷になって下さい」
はあ?
「こ、こんな時に何を…」
「グキャアアア!!」
ドシャアアン!!
怪物が唸りを上げ、私達のほうに突進してきた。
すかさず皆守くんが私の腕を引っ張って、間合いを取る。
「派手にやりましたねぇ」
怪物が突っ込んで壊した花壇から、土煙が上がっている。
瓦礫が無惨に散らばっていて、グシャグシャになっていた。
…あんなの食らえば絶対死ぬ!!
「…皆守くん、逃げよう!!」
半ば狂乱しながら私が言うと、
「ダメですよー。あんなの放置しちゃあ」
正論がさらりと返ってきた。
「それはそうだけど、どうすんの!このままじゃ死んじゃうよ私達!」
私は泣き叫んで彼のシャツを掴み、ガクガクと揺らす。
すると皆守くんが妖艶に微笑んで、
「…言ったでしょ?一つだけ手があるって」
するりと私の頬に手を伸ばす。
「契約しましょう。月影さん、僕に尽くすって誓って下さい」
「…へ?」
契約…?
「ほら、早くしないと…来ちゃいますよ?」
皆守くんが怪物を見やり、私を促す。
確かに瓦礫の崩れる音がして、怪物の唸り声が聞こえた。
「わ、判ったから何とかしてよ!契約でも何でも結ぶから!」
とにかく死にたくない。私がそう吐き捨てると、皆守くんはやはり笑って、
「…交渉成立、ですね」
微笑むと、私の左腕を取って、先程噛まれた傷口の血を舐める。
「…なにして」
何してんの、と言い切る前に、唇を塞がれた。
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