第3章 住人達とご対面

2/9
前へ
/332ページ
次へ
「ごちそうさまでした」 しっかりと手を合わせてから、私は立ち上がる。 「美味しかったです、ありがとうございました」 食器を洗っている家政婦さんにお皿を渡し、ついでにお礼を言った。 「あら、いいのよお礼なんて」 家政婦さんが微笑みながらそれを受け取り、私はきびすを返して皆守くんの方へ行く。 …ちなみに、あれから約一時間半くらい経過した。私も服を着替え、首の傷を手当てしてもらい、ご飯を食べたというわけだ。 …で、自室に戻ろうかと思っていたけれど、上へ上がる階段ではなく、地下の方に向かっている皆守くんに、 「ねぇ、どこいくの」 と私は呼びかけた。 すると皆守くんは階段を下りながら振り返って、 「いえ、ちょっと挨拶に。…貴女も来ますか?」 「へ?」 …というわけで案内された地下一階は、上とは全然違って暖かみがない。 全体的に壁や床は白いタイルみたいなので囲われ、機械的な雰囲気を醸し出している。 「なんか…進化した病院みたいね」 その様に眉根を寄せながら、私はこぼした。 「まあ、病院みたいなもんですし」 パーカーのポケットに手を突っ込みながら、皆守くんが答える。 「…医療施設ってこと?」 隣に並び、問いかけた。そういえば研究、医療施設を兼ねているって言ってたよな。 「そんな感じですよ。…普通の医者じゃ診れない病状や病気にかかった子供がくる…ね」 「普通じゃ診れない…って」 その言葉が引っかかって、私は怪訝な顔をした。皆守くんは何かを見つけたような表情で前を見る。それから、 「万琴」 まこと? 口から出された言葉に、私も前を見た。 …居たのは小学校低学年位の男の子で、壁に手をつきながら歩いている。 「あ…千郷さん」 どこか儚げな印象を与える、雪のように真っ白な肌をした少年が、皆守くんに微笑んだ。 「何してるんですか?祈零はどうしました」 彼に歩み寄って、皆守くんも優しい微笑みを向ける。 「んー…今日の運動。お兄ちゃんはご飯食べてます」 幼いが、どこか大人っぽい静さを含んだ眼差しで、少年が私を見やる。同時に澄んだ子供らしい声で、 「あなたは何てお名前ですか?新しく入ってきた人?」 聞かれて、私ははっとなる。 「私は…」 「万琴!」 自己紹介しようとした時、声が聞こえた。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

490人が本棚に入れています
本棚に追加