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「仕事って…?」
私が引きつった顔で尋ねると、
「怪魔退治です。大丈夫ですよ月影さん。僕が守ってあげますから」
皆守くんが爽やかに微笑んだ。
そんなぁぁぁあ!!
行くの!?私も行くの!?
「じゃあ僕らはお暇しましょうか。…行きますよ月影さん」
「へあっ」
手首を掴まれ、引っぱられる。
ああ…みんなが遠くなってく…
「いってらっしゃーい」
万琴くんの声だ…はは…生きて帰って来れるかな…
階段を上り、一階に着いたところで、
「あ、銃取ってこないと。…ちょっと待ってて下さいね」
「銃って…物騒ね」
「武器は多いほうがいいでしょう?あ、そうだ月影さん」
そう言うと皆守くんは妖艶な笑みを浮かべて、
「大人しく待ってないと後でお仕置きしちゃいますから」
ーぞくっ…
ただならぬ彼の威圧感に、私の背筋を氷のようなモノが伝った。
「に…逃げないわよ!」
「ならいいですけど」
皆守くんは背を向けて、地下に降りていく。…下に武器庫でもあるのか。
「…やだな…」
彼の背中が見えなくなったのを確認して、私はぽつりと呟いた。
…戦闘に赴くだなんて。
私はそういうことのプロじゃないのに…やっぱり囮かな。それとも武器として?
「どっちにしろ、あんな怪物に食われるなんて願い下げだわ…」
弱音吐いてる場合じゃない。しっかり自分の身を守らねば。
「うし。…頑張ろ」
「何をですか?」
「ふわ!?」
後ろからの声に私はびっくりして変な声を上げた。
「準備完了です」
隣に並んだ皆守くんの腰には、大きなポーチが吊られている。
…あん中に拳銃とか銃弾とか入ってんのかなぁ…
「行きますよ、月影さん」
促され、私も彼の後をついて行く。ドアを開け、外に出ると辺りは真っ暗だった。
まぁ、もう七時過ぎてるだろうし。
星と月が空で瞬いている。
…綺麗だ。
薄明るい光が、流れてゆく雲と沈んだ色の空を僅かに照らす。
そんなごくある夜の空に、私は見ほれていた。
「月影さん?」
隣からの呼び掛けに、私は振り向く。
「何よ」
「や、ぼーっとしてたみたいなんで、呼んだだけです」
「…あっそ」
特に反論しないで、私は空へと視線を戻す。
「…」
「…」
無言の時は続いて、…さすがに何か言った方がいいかなと思ったけど、皆守くんも考え事をしているみたいなので放って置いた。
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